それぞれのフライトジャケットには、時代のニーズに応え、開発・改良を重ねてきた歴史があります。
多くが軍の装備品として開発のされ、飛行士達の意見を収集するところからスタートしてきました。
収集した情報を航空医学の観点から分析。パイロットの身体的特性や機能条件と重ね合わせることにより、
新たなジャケットのデザイン制作が進められ、今日に至るまでに数多くの傑作モデルが誕生してきました。
適応温度 | |||||
ライトゾーン -LIGHT ZONE- +10°C〜+30°C |
中間ゾーン -INTERMEDIATE ZONE- -10°C〜+10°C |
ヘビーゾーン -HEAVY ZONE- -10°C〜-30°C |
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1927年 | 陸軍航空隊 | A-1 | |||
1931年 | 陸軍航空隊 | A-2 | B-1/B-2 | ||
1934年 |
陸軍航空隊 | B-3 | |||
海軍航空隊 | M422 (G-1の原型) |
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1939年 |
陸軍航空隊 | B-6 | |||
陸上整備員用 | D-1 | ||||
1941年 |
陸軍航空隊 | B-7 | |||
陸軍 | JACKET. COMBAT. WINTER (TANKER) |
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1942年 | 海軍航空隊 | M-445 | |||
1943年 |
陸軍航空隊 | B-10 | B-9 | ||
陸海共通 | AN-J-4 | ||||
1944年 | 海軍航空隊 | M-445 | |||
1945年 |
陸軍航空隊 | L-2 | N-2/N-3 | ||
海軍整備員用 | N-1 | ||||
1946年 | 陸軍航空隊が空軍として独立 | ||||
1947年 |
空軍 | L-2B | B-15C/B-15D | ||
海軍 | G-1 | ||||
1948年 |
空軍 | N-2B | |||
海軍 | AL-1 | ||||
1950年頃 |
空軍 | N-3B | |||
海軍 | J-WFS(WEP) | ||||
1955年 | 空軍 | MA-1 | |||
1965年 | 陸軍 | M-65 | |||
1973年 | 海軍 | CWU-45/P | |||
1978年 | 陸海共通 | CWU-36/P |
A-1
陸軍航空隊飛行服の第一号、夏季用レザー・ジャケット。フロント・ボタン仕様、衿のニットが特徴。
A-2
A-2は馬革で、袖と裾はニットになっている陸軍航空隊のシンボルとなったジャケット。
襟のバタつきをおさえるドットボタンや真鍮のフロント・ジッパーが採用されていて、ファスナーの上には防風性の為にウィンド・フラップがついている。
A-1に比べ遮風性、機能性が飛躍的に進化した。
マッカーサー元帥はA-2を特に好んだと言われ、チャック・イエガーがX-1に乗って人類として初めて音速の壁を破った時もこのフライトジャケットを着用していた。1944年の支給終了までに約20万着製造された。
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G-1
海軍を代表するG-1はM-422の改良版で当初はG-1という名称はなく、MIL SPECナンバーで管理されていた。衿のムートン・ボアとチン・ストラップ・ベルト、腕周りの動きをスムーズにするアクション・プリーツ、ボタン止めのフラップ・ポケットが特徴。また左身頃には中ポケット がつけられている。1950年代スペック55J14からG-1という名称が使われた。
この設計は、変更の必要がないほど完璧であり、50年以上も基本スタイルを守り続けている。
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AN-J-4
海軍のM-445をベースに陸軍・海軍(ARMY-NAVY)共通で採用された冬季用モデル。
このAN-J-4はシャーリング(ムートン)素材モデルの完成域に達していた、このモデルを最後にシャーリング(ムートン)素材の採用は幕を下ろした。
B-3
1930年代、戦闘機のコックピットにはまだ与圧装置やヒーターがなく、パイロットは過酷な寒さと戦わなければならなかった。羊の毛皮(ムートン)をそのままライニングにしたこのフライトジャケットは風を侵入させず、体温を逃がさない事を貫いた設計。大型のチン・ウォーマー、アジャスタブル・サイドベルトと共に高い保温性を実現した。
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B-6
B-3をベースに、防寒性を多少犠牲にして機動性を高めた。表がコーティングされムートンのシャーリングも少しライト・ウェイトになっている。 B-3との違いは衿が小ぶりになり、チン・ストラップが1本になった事と背中のアクション・プリーツ、袖口はボタンにより2段階に調節可能、左右にスラッシュ・ポケットを配し実用性があがった。
B-7
1941年にアメリカ陸軍航空隊がアラスカ駐在軍人に極寒地用フライトジャケットとして支給された物です。 B-7はわずか1年のみの生産と言う事で最も少ないフライトジャケットの1つとされています。
B-10
レザー不足等がでてくる中、布地製のジャケットの開発・採用が始まった。B-10は始めての布製ジャケット。ほぼM-422Aのデザインが踏襲されている。 コットンツイルの表地、ライニングにウールのパイル地を使用。袖と裾はニット、前はファスナーを使い保温性、遮風性を確保している。
B-15
B-10の改良型、スラッシュポケット、フロント・ファスナーはセンターから少しずれている。左腕には、ペン・シガーポケットがつけられている。 B-15はモディファイ(改良)により細かな仕様変更があり、B-15Bからはナイロン素材となる。最終のB-15Dモディファイは後のMA-1の原型となってゆく。
D-1
このモデルはフライト・ジャケットではなく、地上整備員(グランド・クルー)用のJKTである。 B-3よりも短くカットされたムートンを使用、小型の衿にチン・ストラップは1本、ファスナー付きのスラッシュ・ポケットが特徴。
MA-1
B-15Dを原型とし、1950年代中期に採用されてから、細部にわたる改良が繰り返され、30年間にわたって使用されてきた。 特徴は袖や衿のニットやリバーシブル仕様など。スペック変更が繰り返されているため、ナイロン製酸素マスク用タブ、機内通信用トランシーバーのコードを接続するループなど短い期間しか使用されなかったパーツもあり、そこがコレクターに人気が高い理由である。 良く知られるオレンジ色のライニングは60年代から採用された。 MA-1シリーズはこちら
L-2B
デザイン的にはMA-1を踏襲しているが中綿はなく、ライトゾーン用のフライト・ジャケット。薄い裏地と肩のエポレット、裾のウェスト・タブがMA-1と異なる。 Nシリーズと同じで初期はエアフォース・ブルーだった。 L-2シリーズはこちら
N-2B
N-3の着丈を見直し、操縦席での着用向けに改良されたのがN-2。袖、裾がMA-1タイプとなっている。フードの内張り部分はN-2Bでアクリル・ボアに仕様変更された。 エアフォース・ブルーのN-2Aを経て、セージ・グリーンのN-2Bへと発展。 N-2Bシリーズはこちら
N-3B
第二次世界大戦中に開発、採用された着丈の長い極寒地用ナイロン・フライト・ジャケット。実際には狭い操縦席での着用には向かずグランドクルーたちの屋外作業時に愛用されていた様子。 エアフォース・ブルーのN-3Aを経て、セージグリーンのN-3Bへと発展。 N-3Bシリーズはこちら
J-WFS(WEP/G-8)
WEPジャケットは海軍の代表的ナイロン・ジャケット、WEP,G-8というのは俗称で正式にはJ-WFS(JACKET-WINTER FLYING SUIT)リブ仕様のスタンド・カラー、胸の大型ポケット、袖口リブニットのV字カットが特徴。
CWU-45/P
ナイロンに代わり、耐火、耐熱性を持ったノーメックス(アラミド繊維素材)を採用。ラウンド・カラーの衿、ポケット・フラップはベルクロ留め。 1976年からは空軍も採用したことからも、このモデルが優れていることが分かる。
CWU-36/P
CWU-45/Pのライト・ゾーン向けモデル。(ライニング無し)
M-65
1965年に採用されたフィールド・ジャケット。取り外し可能なライナーが付いている。
JACKET COMBAT WINTER(TANKERS)
機甲部隊(タンク・クルー)の冬季野戦服(通称タンカース)。細身で保温性、遮風性に優れ細身で動きやすい構造コットン地にウール・ブランケットのライニングが張られている。 フライト・ジャケットに流用されたこともあったが1943年には採用終了。
N-1
海軍の甲板(デッキ)クルー用のジャケット。デッキジャケットという呼称で知られている。着丈の短いフック・タイプと呼ばれるモデルもある。 表はジャングル・クロスという防風・撥水性の高いコットン素材、衿と内側はアルパカ・モヘアが使われていた。